ブロッコリー。それは小宇宙(コスモ)。
あの何とも言えない自然の甘さとまろやかさ。そして独特の旨味。
「ブロッコリー」はアブラナ科アブラナ属の植物で我々がいつも食べている箇所は「花」の部分でございまして、含有する成分の「ブロリコ」が、糖尿病による健康状態の悪化を改善する効果あると報告されている健康にも良くそして美味しい素晴らしい植物。
しかし、育ててみると食べる部分であるブロッコリーは意外と小さく、最後に残るのはその収穫した花の数倍大きい屈強な「茎」なのでありまして、農家さんなどはこの茎を粉砕しまた土に返し肥やしにするのですが、アーバンファーミングとなると農家さんのように土に返すのも一苦労。「でも折角なら美味しく頂くことはできないのか?」
「シリーズ出汁」ではそんなアーバンファーマーなわたしたちが収穫し調理する際に「比較的使用しない部分」と「普段絶対に使用しない部分」を人間の英知を使い美味しく頂くというコンセプトのもと企画されたコーナー。「出汁の出ない野菜なんてない」を合言葉に今まで使わなかった・使いづらかった・捨てていたであろうモノに命を吹き込みます。第一弾が初歩的な「ブロッコリー」
こちら何の変哲もない「ブロッコリー」
何の変哲もないというのもあれなんですが、これは10月に苗を植えてやっとやっとの事で育った恵比寿産のブロッコリー。
そういえば皆さん。ブロッコリーを煮た煮汁を飲んだことありますか?実は何とも言えない芳醇な優しい香りにちょっとした青臭さも合い舞ったいわば「出汁」が出ているんです。専門書によれば我々が食べる花の部分より「茎」の部分に栄養が集中しており、ミカン5個分のビタミンCがあるとのこと。
という事でいつも食べる花の部分と茎の部分を切り分けます。普段ならさよならするか、コンポスト行きの所ですが。今回はまず「茎」の部分を煮だしてみてどんな出汁が出るのか調査します。切り離した「茎」の部分を以下のように細かく切ります。
上から外側。
中~下へとブロッコリーの茎の真ん中の断面です。外側が青く・中側が白いんですね。ほんのり青い香り。そのまま沸騰した1リットルのお湯を沸かした鍋に入れます。
沸騰した鍋のそのまま茎を投入。
ブロッコリーというと僕の頭の中ではこの曲が響き渡ります。
そう!大事なことを忘れていました。
一つまみの「塩」をお入れください。
塩を入れることで「浸透圧」が働き野菜の水分が鍋へと染み出すことを促進させてくれます。あとは放置!30分煮だします。
おぉ~。ほわ~んと甘い香りと煮だされているのか煮汁が青くなってきております。まずはここで味見。
味見して感じたこと
・自然な甘みが引き立っている
・昆布出汁にも似たまろやかな旨味がある
・少し青臭さが感じられる
・シパシパとした渋みも少しあり
味見してびっくり。凄い旨味!!!!
調べてみると昆布バリにグルタミン酸が豊富。
しかもずっしりした旨味ではなく爽やかな旨味。このまま麦みそのお味噌汁の出汁にも使えるレベルです。
しかしここは「もっとおいしく!」という事で
こんな材料を用意してみました。
新たまねぎ!
と言っても今回は「葉」の部分を使用します。
以前ラーメンスープを制作する際に使用した
長ネギの「緑の葉の部分」にヒントを得ました。独特のしっかりとした甘みととろみがつくんですね。
きっと長ネギ以上に甘みを出してくれるはず。
このブロッコリーのまろやかでさわやかな旨味とタマネギの葉っぱから染み出す甘みと旨味でしっかりとした出汁になるだろう。20分ほど茹でる。そしてすべての旨味を凝縮する為。
ブレンダーで細かく粉砕するんです。
合計1時間でブロッコリーから出る灰汁
そしてネギから出る少量の灰汁を取り除いてからブレンダーで丁寧に磨り潰します。
見てくださいこのトロトロ加減。
ブロッコリーの茎とタマネギの葉が
磨り潰されその後再び20分煮だし
旨味が凝縮されたスープの完成です。
そして2度目の味見。
味見して感じたこと
・タマネギの葉の甘みとブロッコリーの甘みが調和
・旨味は新芽と葉の独特の丸みのある出汁
・ブロッコリーの茎単体ではない旨味も感じられる
・香りは野菜本来の青い香りが少々(気にならない程度)
・1時間煮た事でシパシパしたイガイガ感は0に
タマネギの葉を入れたことで甘味と旨味が倍増。口に入れた途端、自然の甘さに驚く事でしょう。そしてしっかりとした旨味も感じ取れます。野菜の茎や葉っぱだけでこんな旨味が出るとは・・・
折角こんな素晴らしい出汁がとれたので
おいしいスープに変身させたいと思います。
味見して感じた「グルタミン酸」の旨味。
そして際立つ柔らかい新芽独特の香り。
この味に合わせるなら燻製臭がぴったり。
最初は燻製したパプリカなどが合うかと思いましたがもう一つのうまみ成分「イノシン酸」豊富で燻製臭がするものと言えば「ベーコン」
今回は脂身が多く燻製臭もしっかりとした
ドイツの「バウホシュペック」という
豚バラの燻製を使用しました。
塩味もほどほどで僕はよく新鮮な生卵と
チーズで作る「カルボナーラ」に使用します。
こちらのバウホシュペックを細かくさいの目に切り新タマネギも余っていたのでそのままスライスして・・・
オリーブオイルと共にタマネギが飴色になるまで炒めます。本当は動物性たんぱく質を使わず調理したかったのですが、ベーコンが入っていないスープ単体でも完成された味なので皆さんお好みでスープストックしてみてください。
炒めたらそのまま鍋の中に入れて煮立てます。
折角なのでブロッコリーも入れてしまいましょう。グルタミン酸のパートは「ブロッコリー」と「タマネギ」イノシン酸のパートは「バウホシュペック」。所謂ダブルスープですね。実の部分も入れたので更にうまみ成分が染み出ている事でしょう。
大体15分ぐらい煮立たせれば完成です。
お好みで黒胡椒をいれてスパイシーに。
牛乳を入れてまろやかにともできますが
野菜の旨味だけで楽しむのが◎
ベーコンとブロッコリーの茎スープ
いつもサヨナラしてしまう根っこから先の「茎」から旨味を抽出。出汁を煮だした「茎」に関してもブレンダーで粉砕するので食物繊維も豊富に採れます。丁度今が最盛期のブロッコリー。育てている方は是非お試しください。
【ブロッコリーの茎スープ】
・ブロッコリーの茎 500g
・玉ねぎの葉 200g
・水 1リットル
・塩 一つまみ
1)1ℓの水を沸かす
2)細かくチョップしたブロッコリーの茎を投入
3)タマネギの葉をそのまま投入
4)一つまみの塩を入れる
5)30分煮だす(灰汁取りは忘れず)
6)ブレンダーで細かく粉砕
7)20分煮て凝縮させる(水が半分の量になります)
8)塩加減をして完成
【気づいたこと】
・もしかしてアブラナ科は出汁の宝庫!?
・単体の出汁だけでは成立しづらい
・ブロッコリーもしかして葉っぱもいけるのでは!?
・根っこはどうなんでしょうか?
次回は葉っぱにも挑戦しレポートいたします。