URBAN FARMERS CLUB

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making of UFC ORIGINAL URBANFARMING COAT

岡山の児島に来ている。児島といえば、国内のデニムの聖地として知られる土地。その児島で創業60年を迎えようとしているワークウェアブランド『JOHN BULL』への訪問が今回の旅の目的だ。

実は、昨年の秋に、UFCとJOHN BULLのレーベルである『makerhood』とのコラボレーションが決まり、UFCとして初めてのオフィシャルウェアを作ることになった。僕らが依頼したのは、「アーバンファーミングにも使えて、なおかつ、普段のシティユースにもそのまま使えるような、アーバンファーミングコート」。デザインはもちろんのこと、ポケットのサイズや数、位置などまでとことん納得できるまで何度も何度も打ち合わせを重ねてきた。そのため、『makerhood』の及川泰伸さんと越智輝佳さんには、たくさんの迷惑をかけた。それでも「UFCのみなさんに喜んでもらえるような一着にしたいですから」と言って、毎回打ち合わせの度に、新しいアイデアを持ち込んでくれた。そして今日、ようやく最終サンプルが作られることになったのだ。

大きな作業テーブルに、今回別注で依頼したダークネイビーの生地がざっと広げられる。まるで、目の前に大きな海が広がったみたいだ。それも、映画『グラン・ブルー』でジャック・マイヨールが水深100mを目指し深く深く潜り込んで行った海の中で目にしたような青。畑では滅多に目にしないような色。すると、その海を裁断師が躊躇ない刃捌きであっという間に切り裂いていく。

一枚の平面の生地が、いくつものパーツにカットされていく様子をみて、「そうか、服って、二次元から立体を生み出すものだったんだ」と当たり前のことに今さら気づく。

JOHN BULLでは、自社の製品はほぼすべてのアイテムをここ児島の工場で行なっている。海外の安い労働力を使う体制が当たり前のアパレル産業の中で、こういう姿勢を貫くことは理想だけでは成し得ないが、作りたいものとビジネスの両輪がきちんとかみ合っているのもJOHN BULLのすごいところだと思う。

作りたいものとビジネスの両立を実現させているのが、この工場の職人たちの技術だ。逆にいえば、誰でもが出来るようなアイテムを発想しないからこそ、高い技術力が必要となる。そして、結果、それがJOHN BULLというブランドに結晶していることになる。

そんな職人たちからも『makerhood』がこれまで手がけてきた、エプロンやユニフォームは「こだわりすぎててめんどくさい笑」と言われることがしょっちゅうあるらしい。料理人、カメラマン、ハンターなどいずれも個性豊かな仕事をしている人たちが望むギアとしてのワークウェア。そりゃあ、めんどくさいに決まってる。

「そんな『makerhood』の中でもこれはかなりめんどくさい方ですよ」と笑いながら、今回のサンプルの縫製を引き受けてくれたのが、伊久(これひさ)絵美さんだ。伊久さんは、JOHN BULLに入社して8年。服作りを服飾学校で学び、JOHN BULLに入社して8年。以来、ずっと縫製の仕事をしている。

「タタタタタタ」「ストトトトト」

工場内には色んなミシンの音が響いている。このコート一着を仕上げるにも、例えば、襟をつけるミシン、袖をつけるミシン、一度に二重線の縫製ができるミシンなど合計5台のミシンを使い分けて縫製していく。

「タタタタタタ」「ストトトトト」

今日の制作の様子を動画にするために、ずっとミシンのそばで撮影をしていたのだが、最初は単なる機械の音にしか聞こえなかったミシンの音がどんどんどんどん気持ちよく聞こえてくるようになる。

ただの布が少しづつ少しづつ服の形になっていく。小さな建築をみているような気持ちにもなる。最初は、ミシンの針と伊久さんの指先ばかりを目で追っていたのだが、ふと足元に目をやると、黒いスニーカーが微妙にペダルを揺らしている。ああ、これも楽器なんだなとも思う。人間と機械が一緒に奏でるミシンという楽器。そこから生まれるのはメロディーのような服。いい仕事だなと思った。そんなとりとめもないことを考えながら撮影していると、伊久さんに

「この大きなポケットって何に使うんですか?」と聞かれた。

そうか。まだ、僕らのことを話していなかった。そこで、UFCのことを話すと、

「え!私も友達と一緒に畑をやってるんです。」

それから一気に距離が縮まった(気がする)。なんでも、家のベランダが日当たりが悪くて何を育てても上手く育ってくれないこと。将来は自給自足のおばあちゃんになることを目指しているそうで、味噌の手作りはもちろんのこと、今年は小豆での味噌作りもしていること。魚醤ならぬ、肉の醤油作りもしていること。そんなに好きじゃないけど、自給自足のおばあちゃんになるための必須アイテムとして干し柿作りもしていることなど、「農」の話になったら、お互い話しが止まらなくなった笑。

それで、「この大きなポケットは、トマトとか大根とか、都会の真ん中で育てた野菜を収穫してそのまま突っ込めるようなポケットが欲しかったから」と伝えると「ああ、なるほど。だから、ちょっと開口部をゆったりさせてるんですね。こうやって、使う人に話を聞くと、イメージできるし、作っていて楽しくなります」と言ってくれた。

でも、それは僕も同じことで、こうして作ってくれている人を間近に見て、実際に作っている様子を見ているうちに、ミシンのひと針ひと針が、畑を耕す鍬のようにも思えたし、そうして出来上がっていく糸のラインは種まきしている畑のようにも見えていた。

仲間の農家にもらった野菜を食べる時、その農家の顔を思い出すように、これからこのコートを羽織る時、きっと今日のことを思い出すだろう。

こんな風にして、僕たちUFCの初めての一着は出来上がった。