URBAN FARMERS CLUB

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未来を耕そう

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私的 街の農事暦  ~1月 水沢凍ると土づくり~

今は大寒の次項、七十二候で言うと水沢腹堅(さわみずこおりつめる)のあたり。沢に流れる水さえも凍る厳冬ならではの風景です。

1年で一番寒いこの頃は、ベランダのプランターの収穫が一番少ない季節。鉢植えラベンダーやローズマリーも、渋い緑に彩度を落としてじっと沈黙している様。ジュンベリーは葉を全部落として、シルエットのみ。春先に収穫できそうなのらぼう菜以外、プランターは土肌を見せています。

土と水。街の中で庭や畑に通うようになって、貴重さと難しさを痛感した自然の要素。

友人が使い終わったプランターの土を、可燃ゴミで捨てると言った時、土って捨てるものだったっけ?と、きょとんとしたことがありました。コンクリートに覆われてる街では、プランターで使った土の行き場が難しいんだと気付かされた瞬間。

「土に栄養が無くなって捨てるのなら、畑と同じように土の様子を見て、種まきを休んだり、堆肥をすき込んだらいい。売ってるようなハイクオリティな土はできないとしても、自分の土を育ててみたらいいんじゃない?」口を突いた咄嗟の言葉に、一番ハッとしたのは私でした。そこから試行錯誤の堆肥作りが始まります。

ベランダのエアコン室外機横は、雑草コンポストとして麻袋を置いています。プランターから抜いた雑草はもちろん、落ち葉になったジュンベリーの葉、剪定した小枝、夏の役目を終えたトマトの乾いた茎などをまとめて入れています。1年通して貯めていくので、冬になる頃には麻袋もパンパン。からからになったコンポストの中身を細かく切ったものと、どんぐり拾いの公園で集めた落ち葉、そしてお米を精米している先輩に分けてもらった米ぬかを使って、落ち葉堆肥を目指します。今年はスイカ2玉入っていた、分厚いダンボール箱を使用。

ダンボールの底に土を敷き、乾いた落ち葉や雑草をふかふかに入れて、米ぬかをたっぷりと。だいたいここで米ぬかをケチってしまいがちなので、多めに入れるのは去年の反省から。湿る程度に水をジョウロでかけたら、上からギュッギュと踏み込みます。ダンボールの四隅も忘れないでギュッと。先程のふかふか落ち葉が、みっちりと詰まった層になるまでまでしっかり踏み込みます。ダンボールいっぱいに踏み落ち葉の層を重ねて蓋を閉めたら、使わなくなった毛布をかぶせます。シングルの毛布を半分に切ったくらいの大きさが丁度いい。

これから数日、無事に発酵が始まって温度が上がるかどうか。ダンボールに手を入れてドキドキする日々が始まります。毎朝毛布を外してダンボールを搔きまわす様子は、まるで糠漬けを掻き回しているよう。半年後、どんな感じに仕上がるだろう。

落ち葉堆肥の仕込みを終えて立ち上がったら、二階のベランダから蝋梅の枝数本を新聞紙で包み、抱えて歩くお着物姿の女性が見えました。小さく黄色いつぼみが、明るい日差しのようで、華やかに色を振りまきます。春が来てる!嬉しくなるこの感じ、去年もいや、その前から毎年感じてる。街に漂ってきた春の兆しに高揚する気持ちがありました。