URBAN FARMERS CLUB

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2020年10月 いまの僕ら

のっけから言ってしまおう。

僕は、UFCをARTだと思っている。ARTにはふたつの意味がある。ひとつは、絵画に代表されるような芸術作品という意味。もうひとつは、なにかをするための技や技術という意味である。この週末は、まさにそんなふたつの意味でのARTをメンバーたちと一緒に分かち合うことができたので、週末の活動レポートもかねてつらつらと思うままに書いてみたい。

 

 

土曜日は、Japan Herb Science主宰であり、国内屈指のハーバリストである石井智子さんにお願いして、石井さんの圃場ツアー&ワークショップを開催した。(石井さんについてもっと知りたい方は、このARTICLE内にある『農家100人』という記事を読んでください)

ハーブというと、綺麗な色の花々が咲き誇るハーブガーデンをイメージする人も多いかもしれない。もちろん、花は美しいし、その光景を見ているだけで心が癒される人もいるだろう。だが、今回のツアーで石井さんが見せて、伝えて、学ばせて、そして手渡してくれたものは、人間が植物によって生かしてくれる(生かされていく)ような生命の循環の恵みだった。

ハーブは特にヨーロッパ原産の品種が多く、アルカリ性が強い土壌で育つ植物たちである。日本は酸性の土壌であるから、石井さんはハーブを育てるために、10年以上の長い長い時間と情熱をつぎ込んで土作りをしてきた。そして、英国薬局法でも薬として認証されているハーブの中から100種類以上のハーブたちを自生させている。自生ということは、この土地に根付くということで、どんどん野生へ戻っているということでもある。

その圃場へ、渋谷エリアに住み、暮らすメンバーたちが訪れる。

 

ローズマリー。ミント、レモングラス、マジョラム。いまこの時に自身の生命力を最大に横溢させるハーブたち。触れて、顔を埋めて、香りをいっぱいに吸い込んでいく。しばしマスクから解放され、当初は緊張気味の表情だったメンバーたちの「ああ〜」とか「うわぁ」とか「ハァ〜」なんて、言葉にならない感嘆のがあちこちから湧き上がる。

そんなメンバーたちに石井さんは、ひとつひとつ、それぞれのハーブの原産や効能、育っていくときの様子を話してくれる。どれも本に書かれているような説明書のような言葉ではなく、すべてが石井さんがずっとこれらのハーブを育て、見つめて続けてきて、実際に経験して発見して、そこからたった一人でマニュアルもないハーブの世界で必死で編み出した知恵や技術から発せられる言葉にメンバー全員が引き込まれていく。

 

石井さんは言う。

「いま、こうやって話していることも、私が考えたことじゃないの。全部、この子たち(ハーブたち)が教えてくれたのよ。私は、この子たちがのびのびと育ってくれるようにお世話しているだけ。交通整理してるだけなのよ。前は『自然との共生』なんて頭だけでひねり出したような言葉を言ってたこともあったけど、それって人間の驕り。自然があってこそ、私たちは生かされているんだから。自分のエゴで自然をコントロールしようなんてせずに、どうせできっこないし。だったら、すべてを自然に委ねるしかないの。私はそれを見守らせてもらってるだけ」

午後からのワークショップに備えて、ハーブをメンバーたち自身が自分で少しづつ収穫をさせてもらい、昼食へ。

 

この日の昼食は、名うての料理人でありながら、「料理人は料理しているだけじゃいけない」と都内から藤野へ移住し、自ら畑を借りて作物も育てている『土とシェフ』の五十嵐創にお願いしていたお弁当。

少し前に、五十嵐とは畜産から排出されるCO2の話をしていて、そんなことから今回のお弁当はビーガンメニューとなった。

ピーマン黒酢寿司、発酵白菜の甘酢漬け寿司、インゲンの素揚げ寿司(発酵のらぼう菜ソース)、焦がし椎茸寿司、トマト寿司、枝豆、イチヂクとアボカドとカブ、ジャガイモとセロリのサラダ、柿と栗とさつま芋の白和え、生姜稲荷、南瓜黒豆羊羹寿司、ズイキの黒酢漬け、ゴーヤの醤油漬け。

ひとつひとつの食材の個性が様々な調理法とアイデアを駆使して引き出されていて、一口ごとに、新たな味覚の扉が開かれていく。すべてが、この日のために五十嵐が新しく生み出してくれたオリジナルだ。僕は料理には疎いので、それぞれの野菜たちの旨味成分や、それをどう調理したり掛け合わせたりすればいいのかなんてさっぱりわからないが、食べていて感じたことは、どのメニューにも無理がないと言うか、例えばすごく辛いソースで全体を覆うとか、そう言った強引さを感じない。野菜も調味料も合気道のようにお互いがお互いを引き出しあった結果、口の中にはまあるく調和のとれたハーモニーが静かに、ゆっくりと、寄せては返す潮の満ち引きのように現れてはそこはかとなく消えていくのであった。

 

 

午後からのワークショップは、午前中に収穫した、ローズマリー、ミント、レモングラス、マジョラムで、ハーバルバスピローを作った。芳香成分と薬効がピークに達したハーブたちを細かくカットして、それを枕型の大きなティーバックのような袋へ詰める。要は、この枕を抱きしめて、お風呂へ一緒にドボンすれば(入浴のためにはしっかりとした手順があるのだが、ここでは割愛する)、たっぷりの香りと薬効に体が満たされる。

ついさっきまで、石井さんの圃場で生きていたハーブたちを丁寧に丁寧にちょきちょきと細かくカットしていく。慣れない作業に苦心しながらも、メンバーたちはみんな嬉しそうな表情をしている。

 

と、ここまでが本日のワークショップの内容だったのだが、石井さんがサプライズで、参加メンバー一人一人に簡単なカウンセリングを施して、それぞれに合ったハーブソルト(入浴のための)まで作ってくれることになった。「ゆっくり眠れるように」とか「仕事で集中力が増すように」とか、それぞれが日々の暮らしの中で身体の中に溜めていたストレスについて話す。ちなみに、僕は、石井さんに「さて、おぐらん(僕のあだ名)は、どうなりたい?」と聞かれ、即答で「邪気を払う」(笑)。「そんな人初めてだよ」と言いながら、石井さんが取り出してくれたのは、インドやブラジルなどスピリチュアリティが豊かな国で昔から大切に受け継がれてきた樹々から採れた精油をブレンドしてくれた。

最後に、参加メンバーみんなで今日一日の感想をシェアした。

「わたし、今日1日で、生き返った気がする」ある女性の言葉に、参加メンバーみんなが笑顔で頷いていた。

 

 

さて、夜は、これからUFC初めてのオンライン会議である。

リトリートセンターに残ったのは、アカデミア生、スタッフ、明日のリトリートセンターOpen Dayに備えて前泊入りした家族の計6名。みんなで皮から手作りした水餃子で夕食を取った。みんなで皮をこねこねした水餃子は、形はばらばらだったけど、そんなこともワイワイ話しながら美味しく食べた。

 

100人会議と銘打った、当夜のオンラインミーティングは、リトリートセンターで一緒に参加したメンバーも含めると20名。集まったメンバーも園芸療法家、広告ディレクター、大学教員、ライター、システムエンジニア、主婦、企業ビジネスマン、元プロボクサー、などなど普段なら一堂に会することがないような多様な人たちが集まってくれた。

彼らにとって、UFCとは、会社でもないし、学校でもない。当然、「ねばならない」責任も義務もない。それなのに、週末の夜に集まってくれた。そこから、話題は多岐に渡った。例えば、現状以外のSNSを導入してもっとメンバーが効率よく情報をキャッチするにはどうしたらいいか?といった話題から、UFCというコミュニティを今後どのように育んでいくかといった話題まで。みんな、それぞれが仕事も年齢も育ってきた環境もバラバラだからこそ、それぞれの視点から出させる発言が面白い。便宜上「会議」としたものの、ここで「正解」を出す必要はない。そもそも、UFCは500名を超えるメンバーがいるが、その全ての人それぞれが満足できる「正解」なんてあるはずもないのではないか。

みんなの意見を聞きながら、頭の中には、今日の石井さんの圃場やリトリートセンターの圃場で育っている野菜たちのことが受けんでくる。どの野菜たちも、それぞれ好む土壌や、水分や湿度など当たり前に異なる。同じう野菜でも育ち方のペースも異なる。それが自然だ。だからこうして集まる声もそれぞれの個性であり、自然なのだ。だから、このミーティング自体が、人間たちが集まった畑なのだ。そうやって、コミュニティを畑に置き換えてみると、色々と気づくことがあった。昼食の五十嵐が作ってくれた合気道ビーガンも思い返されてきた。畑と合気道はUFCというコミュニティにとってのキーワードなのかもしれない。気付けば、深夜12時間近までミーティングは続いていた。

翌朝も快晴。

今日はリトリートセンターのOpen Day。Open Dayとは、ざっくりいえば、みんなで畑仕事して、美味しいご飯食べて、作物を育てて、その収穫を分かち合う1日だ。集まったのは、11名。毎回のように参加するメンバーもいるし、初めて参加するメンバーもいる。今年の春から始めたOpen Dayにはのべ100名以上のメンバーが参加してくれている。

年間を通じて、このOpen Dayで育てているのは大豆。これは、冬に自分たちで育てた大豆で味噌を仕込みたいから。ここ数年の気候状況の変動が凄まじいので、今年は、適期と言われる播種時期の前後1ヶ月くらいの幅をもたせて、4種類の大豆を育てている。こんな風に、仮説と検証を畑で実習しながらできるのも、僕らが農を業としないからできるわけで、これが生産農家ならこんな遊びみたいなことはできないだろう。ただ、面白いのは、実は適期に蒔いた大豆はあまりちゃんと育ってくれなかった。花を咲かせる時期がずっと長雨に当たってしまい、大豆にとって好ましくない天候が続いたからだ。その分、随分と遅めに蒔いた大豆がかなりしっかりと育ってくれている。これらの大豆の株元周りの除草をしたり、夏野菜最後の収穫をして、片付けをした。

今日のランチは畑が食卓。調理法も火(炭)で焼く、蒸す、といったワイルドな流儀。近所の猟師から手に入れたイノシシの肉とピーマンで回鍋肉、リトリートセンターで育てた安納芋で焼き芋がメインディッシュ。気持ちよい秋晴れの空の下で、畑で火を囲みながら一緒にご飯を食べる。どんな豪華にしつらえたレストランだって、こんな気持ち良さは味わえないだろう。

 

動けないくらいたらふく食べてぱんぱんのお腹のまま、本日のメインイベント、芋掘り大会へ。マルチを剥がせば、ふかふかの土とジャングルのように延びた芋の蔓。グローブをしながら手で掘っていると、グローブの指先で芋の表面をこすって傷つけちゃいそうなので、グローブを外して、土の中に手を入れる。芋が見つからなくても、土と触れているだけで気持ちが良い。たまらず、長靴も脱いで、裸足で土の上を歩いた。隣で夢中で芋掘りしている子供達に「靴脱いじゃえば?」とどろんこ仲間に道連れ。そうしたら、それまでも楽しそうだったんだけど、ぐんぐん子どもたちのテンションが上がりまくっていく。長い長い時間をかけて、たくさんの先人たちが耕してきた土には、太陽と水と野菜たちの残渣や虫たちの死骸がエネルギーとなって眠っている。そのエネルギーが裸足の子どもたちの足の裏からどんどん流れ込んでいるみたいだ。頭で考える前に、身体が感じて発する声に忠実な子どもたちは、歌い出したり、大声で笑ったり、最後は踊りだしたりと土のエクスタシーへと登りつめていった。

 

こうしてこの2日間を振り返ればよくわかる。

石井さんが長い時間をかけて耕し、土を育て、じっくりと向き合うことで身につけてきたハーブへの技術は、野生のハーブというメディショナルな芸術となり、五十嵐くんが作ってくれた料理も、彼の知恵が作り出してくれた食べる芸術である。夜のミーティングに集まったミーティングも、それぞれのメンバーが自身の仕事や暮らしの中で蓄えた技を持ち寄って、その意見やアイデアをコラージュした作品である。今、夢中で芋掘りをして笑いあっている大人も子どもも、みんな土という自然の叡智が育んでくれた芸術なのだ。

そして、UFCとは、これを読んでくれているメンバーみんなが集うことで、都会のど真ん中でも農的な暮らしを実践可能にする技術や技を磨きあい、そうすることで未来を少しづつでも動かしていく、社会というキャンバスに作り出していく芸術作品なのであると、強く思った2020年の10月だった。