URBAN FARMERS CLUB

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未来を耕そう

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コロナ禍より立上げた野菜の寄付事業

きっかけは、一本の新聞記事でした。

コロナウイルス感染拡大が騒がれ始めた2020年の早春の記事には、一人の児童養護施設出身の若い女性が苦悩する姿を伝えていました。その記事を要約すると、自身が卒園した施設での経験をもとに、彼女自身も児童養護施設の職員として働くことを目指し、アルバイトで専門学校の学費からアパートの家賃などの生活費全てを稼いでいました。ところが、コロナウイルスの影響により、アルバイト先の飲食店は軒並み閉店。彼女は生活費を稼ぐ術を失いました。役所へ問い合わせても未成年であることと両親の不在を理由に融資は断られてしまいます。そんな出口の見えない中で、まず彼女は食費を削ることを始めます。毎日の食事はもやしをひと袋。時折ちくわを食べることが楽しみと書かれた記事を読み、おそらくは全国に多数いるであろうこのような苦難な状況にある人たちへ自分たちでできることは何かと考え、始めたのが自分たちで育てた野菜を届けることでした。

具体的には、養護施設を卒園したのち、自立した生活が困難な全国の若者たち500名の支援をしている一般社団法人『Masterpiece』と、渋谷区内で主にシングルマザーの家庭などを中心に食料の配布を行っているNPO法人『フードバンク渋谷』と連携し、米、みそ、イチゴなどの果樹、サラダになる葉物野菜、日持ちがするジャガイモや玉ねぎなどを届けています。

上記団体へは様々な企業が金銭の寄付や食料品の寄付も行われているのですが、日持ちする缶詰やお菓子などが大半を占め、生鮮食品はほとんどないということから、実際に作物を届けた方々からは「こんな美味しい米を食べたのは初めてです」とか、「採れたてのイチゴを子供が目を輝かせて食べていました」などメッセージをいただいてます。

「アーバンファーミングの意義と価値とは」という記事の最後に書いたUFCが描くグリーンインフラとは、直接はUFCの活動にコミットしていない方でも、誰もが自然の恵みを享受できるような仕組みのインフラを作ることです。

そして、現在は、渋谷エリアの圃場での作物だけではなく、この活動方針に賛同した有志メンバーたちとともに、神奈川県・相模原市にあるUFCリトリートセンターの広大な圃場で多種多様な作物の栽培も行なっています。延べ人数にすると、年間100名以上のメンバーたちが思いを込めて育てた野菜をこれからも届けていきます。