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お正月飾りのこと
2019年も残りわずかとなった頃、渋谷ストリームで「お正月飾り作り」WSを開催しました。今回はUFC田んぼ部が甲府で手塩にかけて育てたコシヒカリを刈り取った後の稲わら(もちろん無農薬、有機栽培)を使い、素朴な味わいの輪飾りを作りました。現代の稲刈りは、機械化が進みコンバインで粉砕されながら刈り取ることが多いため、こうして手刈りされた稲わらはとても貴重です。昔から、農閑期の副業として作られていたしめ飾りも、今は稲わら以外の素材で作られていたり、輸入品も多くなっているとか。。。
仲間が作ったお米を収穫祭で味わい、さらに残った稲わらで新年の準備をする、これってとても贅沢なこと。
今回は稲わらの他に以下のオプションを用意して、それぞれ好きな物を組み合わせる方式。同じ材料を使っても、作り手の個性が出てバラエティ豊かな輪飾りができました。
【飾り】
・ゆずり葉(新芽が出ると古い葉が散ることから、代々続いていくことの縁起物)
・常緑樹の葉(今回は夏みかんの葉っぱ。裏白(うらじろ)の葉も似合いますよ)
・赤い実(赤は魔除けになるそう。南天などもいいですね)
・紙垂(輪飾りから垂らした藁とともに雨と稲妻を表しています。これは、雨を稲妻が稲を太らせてくれるからだそう)
・小さいみかん(橙(だいだい)の代わり、金柑などでも代用できますね)
・赤い紙縒り
「お米がたくさん実りますように。命が代々伝わりますように。」とてもシンプルだけど力強い祈りが込められた輪飾り。こう考えると、今の私たちが考えるよりずっと、日本人にとってお米って「命を繋ぐ」大切な作物なのだなぁと思います。
昔から農家さんたちは稲わらを、筵(むしろ)や草鞋(わらじ)、縄といった道具の材料として利用してきました。その場合は、右利きの手が力も入り、作業も早い「右綯い」という綯(な)い方で縄を綯いますが、神様に捧げたり、神聖なものを作るときには「左綯い」とう綯い方で作ります。これは古来より、「右は俗、左は聖」といった日本の空間認識だけにとどまらず、慣れない左を使うことで、ゆっくり意識的に手を合わせ、祈りを込めて縄を綯っていたのでは?という説もあるそうですよ。
神社の境内や御神木がそうであるように、しめ縄が張られている空間は、そこが神聖な場所であることを示すもの。門松やお正月飾りを飾るのも、歳神様をお迎えする準備ができましたよー!のしるしとなるものです。できれば、1年間お世話になった道具の手入れやお部屋の大掃除を済ませて、12月28日までにお正月飾りを飾りましょう。29日は苦立て、31日は一夜飾りとして飾るのを避けるそうです。28日までにどうしても無理だったら、なんとかがんばって30日に!そして、お迎えした歳神様をお正月の間おもてなしして、小正月(1月15日)に地域のどんど焼きで煙にしてお送りしましょう。さらに、その灰を家の周りに撒いておくと厄除け効果があると言われています。
日本各地、様々な形や飾りをまとったしめ飾りがあり、商売繁盛とか大漁祈願とか千客万来とかさまざまな祈りが込められています。それぞれの形に託した意味を紐解くことに興味を持った方に、しめ飾り研究家の森須磨子さんの「しめかざり」という本が写真が美しくて解説もわかりやすくておすすめです。
そうそう、新年に初詣に行った際には、各地の神社のしめ飾りに注目してみてくださいね!