「田んぼ部長やってみない?」
小倉さんから打診されたとき、「ひとまず1年やってみるか」と
何故自分が選ばれたのかわからないまま軽い気持ちで部長を引き受けました。
どうしようかと考えているうちに、自分の中でパッと思い浮かんだ今年の活動のテーマはシンプルに、「皆で楽しく、雨水(天水)だけで昨年以上の美味しいお米(コシヒカリ)を作りたい。(そして運転手として安全に送迎すること)」でした。
2020年最初の活動は2月でした。田んぼに天水(雨水)を溜めるための畦を作る「くろ切り」と呼ばれる作業です。
メンバーは有志の4名が集まってくれました。
棚田管理人の林良樹さんに教わりながらスコップで田んぼの周りの土を切るようにして崩し、田んぼ側に盛っていきます。これが結構重労働できついです。
でも、鳥の囀りが聞こえる静寂な里山の環境の中で黙々と皆でザクッザクッとスコップで作業するのは気持ちが良いものです。
棚田オフィスから見る人工物のない景色なんて最高です!
本当は3月に田んぼに昨年収穫した稲藁を細かく切って漉き込んだり、田んぼの周りの木々を伐採したりと、田んぼ部のキックオフをしたかったのですが、コロナの影響で実現できず次の活動は5月の田植えになってしまいました。
田植えは5月に都会の人と一緒に育てたコシヒカリで自然酒を作っている「自然酒の会」のメンバーと一緒にお互いの田んぼの田植えをフォローしながら行いました。
田植えでは参加人数も増え、子供から大人まで老若男女が参加してくれました。
皆、横一列になって手先を器用に使い均一に植えていきます。子供同士はすぐに仲良くなり、田んぼの周りを走り回っていました。
ただ遊んでいるだけでなく、その場にいるだけで場を和ませる力を子供は持っています。損得勘定や何を話したらいいかなど、色々と考えてしまう大人にはなかなか出来ない難しい技術です。
6月から8月は毎年恒例草取りです。
今年は去年より草刈りの回数は1回多かったです(汗)
田んぼに向かうと、高密度に茂った雑草の皆さんが我々を抜けるものなら抜いてみろと言わんばかりに迎えてくれました。
8畝の田んぼに一斉に広がり、手を土の中にいれ感覚を頼りに雑草を根こそぎ抜いて田んぼの外に捨てるか、土の中に埋め込み稲の栄養源とします。
田んぼ部の中央部にいくほど外に投げづらくなり、都度移動して田んぼの外に捨てに行かなければいけません。ここで登場するのが雑草を運んでくれる小さな運び屋さんです。
お願いしなくてもせっせとメンバーのところを回って雑草を袋に入れて運んでいってくれます。自分が同じ年齢の時は何も考えず無邪気に遊んでた記憶しかない。「そもそも自分はこんな経験してこなかったし、こんな気遣いもできなかったなぁ」と少し恥ずかしく感じました。
「子供の時から、自然の中で一からものを作るという経験をしたこの子たちは成長したら、いったいどんな大人になるのだろう」と勝手に妄想してしまいました。(良い意味で)
良いお米ができるようにと祈りながら必死に行った草取りのあとは9月の収穫です。
収穫は毎年人気イベントのため、多くの人が集まり参加者数としては今年最大でした。
手鎌で金色色の稲を刈っていく、そして昨年刈った藁で作ったすがい縄を使って藁を結んで地元の竹でつくったウデにはざ掛けして天日干ししていきます。
収穫したもの、周りにある自然のものを道具として使うことが当たり前ではない都会民にとっては全てが新鮮に映ります。
はざ掛け終了後、収穫した稲が夕焼けをバックに静かに佇む光景を見て、やっとここまで来れた達成感を感じるとともに草取りの苦労が報われた気がしました。
はざ掛けして稲藁を1週間ほど乾燥させた後は脱穀です。
脱穀機で脱穀しますが、ここでもお米の神の子とその仲間達が率先して次々と脱穀をお手伝してくれ、あっというまに終了しました。
収穫後に気づいたことですが、自分たちがコシヒカリだと思い育てていたお米の大部分がもち米でした。どうやら苗屋さんが苗を間違えで渡してしまったらしいです。
皆に申し訳ない、かつ悔しい気持ちはありましたが、もち米とうるち米は苗の状態だけでなく成長過程でほとんど区別がつかないことがわかったことだけでも収穫だったと思います。
苗の違いを自分の目で確認するためにも来年は育苗からやってみたいという気にもなりました。
今年はUFCの収穫祭は、残念ながら新型コロナの影響で開催出来ませんでしたが、鴨川での林さん主催の収穫祭は開催されました。
テーブルには発酵食を中心とした色とりどりの美味しそうな料理が並び、皆でテーブルを囲みました。1年無事に収穫できたことを感謝し、天水棚田米で「寺田本家」さんに作ってもらった自然酒で祝杯を上げました。何よりそこでいただいた天水棚田米は、もちもちして甘みがあってご飯だけで何杯もいけるほど美味しかったです。
自宅で炊くとさっぱりしていて、おかずに合うお米の印象でしたが、林さんに聞くと特に工夫はしていないとのこと、炊き方でこんなにも味が違うのか!?であれば来年は林さん達が今年復活させたという里山にある竃でぜひ炊いてみたい!
午後は里山のウッドデッキでTAWOOなどのメンバーによる太鼓演奏などに酔いしれ踊りました。里山の中で最大限リラックスし、自然と笑顔があふれる1日でした。
さて来年はというと、個人的には
美味しいお米は作れたので、来年の目標はしっかりコシヒカリを200キロ近く作り、米麹で味噌を作ったり、困っている方に美味しいお米を届けたいと思っています。
味もまだ改善できるかもしれない。
※もち米とコシヒカリが混ざったお米はおはぎのWSで使います。1月に行うので興味がある方は是非!
今年は米作りメインでしたが
来年はもっと多くの多様なメンバーの方に参加してもらい、体験がシェアされ活動の枠が大きくなり、鴨川のコミュニティとも交流が深まり、新たな活動が創出されたりするともっと面白いと思っています。
これらの実現にむけてはアイデアマンの小倉さんに委ねることとします。
なにより今年は
小倉さん、林さんや参加してくれたメンバー、そして子供たち、自然酒の会のメンバーに温かく見守られ、支えられ、なんとかやってこられたと思います。自分自身が大変であっても、皆に楽しんで帰ってもらいたいと強く思いながらやってきました。
「支える」ということをより意識したと同時に、「支えられ」て有難いと改めて感じた一年でした。
何か特別なことをしてくれてなくてもメンバーがいるだけで心強い。
誰かを支えたいという思いを強く持ち行動すれば、自分の力だけで支えきれなくなった時、どこかで見てくれていて気づいてくれた誰かが微力でもきっと支えてくれる、微力でも集まれば大きな力になる。
そうやって「人」間関係はバランスがとれているのでしょう。
そんなことを里山での米作りで思った一年でした。
最後に
私事ではありますが、来年子供が産まれることもあり一年で部長を退くこととしました。でも、きっといつか自分の子供を連れて里山の魅力を体感させたいと思ってます。
参加してくれた皆さん
1年間お疲れ様でした。そしてありがとうございました。来年は参加できる日は少なくなってしまうと思いますが田んぼ部の更なる発展を祈ってます!
加賀谷 卓