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CULTIVATE BOOKS vol.1

 

本が好きだ。

例えば、「ニンジンの種蒔きはいつ頃がいいんだっけ?」というような具体的な疑問はネットで検索すれば、あっという間にそれに準じた回答が目の前に現れてくる。それは、ドライブ中に、目標に向かって最短の距離を回答してくれるGoogle Mapsと同じで、とても便利でストレスを感じさせない。だから、時折、自分の「?」にネットで最適解を見つけられない時は、とてもイライラしたりもする。勝手なもんだ。

本を読むという行為は、僕にとってはGoogle Mapsを用いないドライブみたいなものだ。だから、いつまで経っても回答を教えてくれそうな農業関係の書籍は買ったそばからどんどん積み上げられていくばかり(本当は、そういう本こそ読むべきだとは思うのだけど)で、小説やノンフィクションや、詩集やアートブックを常に何冊も同時並行で読んでいる。この何冊も同時に読み込んでいくドライブがなにより愉しいのは、出会い頭の言葉との出会いにある。

本を読んでいる時は、その本の世界に入り込んでいるわけだけど、当たり前だけど、いつもの自分がそのままいるわけだから、ふとした言葉と出会った瞬間に現実世界の自分が反応したりする。そんな体験を初めて意識したのは、15歳の時に読んだサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』だった。

主人公のホールデンがちょっとしたことで、すごくビビるシーンがある。その言葉を読んだ時に、ホールデンが自分と重なって、それまで読んでいた物語から自分の学校での毎日に一気に脳みそがトリップして、そこで描かれている物語とは違う感情がどーっと流れ込んできて、「本ってすごいなぁ。どうして、この本ともっと早く出会えなかったんだろう」と感じたことは今でもはっきりと覚えている。

話が最初から脱線した。

この、CULTIVATE BOOKSでは、僕が読んだ本で、曲がり角を曲がった瞬間にハッとする光景に出会った時のような、出会い頭の言葉をもたらしてくれた本を紹介していく記事にしていきたいと思っている。

そんな訳で、記念すべき第一回目に紹介したいのは、Studio Olafur Eliasson (スタジオ・オラファー・エリアソン)の『The Kitchen(キッチン)』(美術出版社刊)。

この本は、昨年のUFCの忘年会の席でメンバーのふみちゃんが教えてくれた。

序文のアリス・ウォータースの言葉を数行読んだだけで、強烈なインスピレーションが湧いてきて、それから丸一日、僕はUFCの新しいプロジェクトを考え続けてしまった。それは、こんな言葉だった。

 

「私はたいていランチの時間に合わせて訪問を計画していることを告白しなくてはならない。それは、オラファーのスタジオでのランチには大きな意味があるからだ。ランチタイムの1時間、スタジオで働く90人の人々が一人残らず集まってテーブルを囲んで座り、シンプルで栄養たっぷりの、そして何と言ってもおいしい家庭料理をともに味わう」

 

これは、僕がUFCで実現しようと考えている「みんなで食べる」の理想的な光景に近しい。

肝心なのは、表層的な回答を手に入れることではない。むしろ、答えではなく、問いをたくさん持てることのほうが僕は大切な気がする。

都会のど真ん中に畑を作る。それは資本力がある企業ならば簡単にできることだ。

でも、なんで都会のど真ん中に畑を作るのか。どうして都会のど真ん中に畑を作りたいと思ったのか。その問いの中に込めた「なんのために」という想いこそが、一番大切なことなんじゃないかと、UFCの活動をしていて日々感じている。

そういう意味で、この本は、僕の中にたくさんの「問い」をもたらしてくれる。出会い頭の言葉がたっぷりと粒立ちして並んでいる。読むたびに、同じテキストでも違ったきらめきを教えてくれる。同時に、自分がやっていることを支えくれるような力強さがある。

だけど、ここまで書いてきたけど、実は僕はこの本を読み終えていない。読み終えるのがもったいなくて、いつも適当なページを開いては、じっとそのページを眺めている。ナイトキャップにお気に入りのウイスキーを一杯口にするような付き合いを続けている。

運良く、この本を知ったタイミングで、今年、オラファー・エリアソンの展覧会が開かれる。その時まで、夜毎、ナイトキャップを愉しむことにしよう。

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/olafur-eliasson/